実態調査(1992年)から その17~小樽の木骨石造建築

2018年04月22日

 3-2:小樽の木骨石造

 小樽の特色、魅力は街並みを彩る多くの石造建築に代表される。軟石の灰色にくすんだ表情は、どちらかといえば重く暗い雰囲気を醸し出すが、半面、暖かな質感も兼ね備えている。小樽という街の歴史の雄弁な語り部であり、往時の気風を現在に伝えている。

 小樽は「石造りの街」と言われるように、全市域に石造建築が分布し、市指定の歴史的建造物31件の中にも12件の石造建築が含まれている。一般には「石造建築」と総称しているが、大半は内部に木造の骨組を持ち、外壁に軟石(凝灰岩)を積んだ「木骨石造」と呼ばれる構造をしている。ただし、国指定重要文化財である旧日本郵船小樽支店など、少数だが、純粋に石積みだけで造られた「本石造」も見られる。

 石造建築は英語でmasonryという。masonry本来の意味は「組積造」といって、石や煉瓦のような塊を積み重ねて造る構造のことを指す。石造だけでなく煉瓦造やブロック造もこの仲間に入る。また木骨石造の煉瓦版ともいえる、木骨の軸組に煉瓦の壁を積んだ「木骨レンガ造」と称する構造もある。日本に古来から伝わる土蔵造も、同じく木骨軸組の構造体をもち、石や煉瓦を貼るのと同様に土で壁を造ったと考えると、同類の構造と考えてよいだろう。

 小樽での組積造および土蔵造りの実態調査は、古くは昭和25年7月に北海道建築部建築指導課により、『北海道に於ける耐火建築物の現況について』(※1)

で報告されている。このうち、小樽市の石造と煉瓦造について年代別にまとめたものが表3-2-1である。当時の小樽市内(昭和33年合併の塩谷、忍路などは含んでいない)には、540棟の石造、59棟の煉瓦建築が遺存していた(※2)。

 

 最近では昭和53年の調査が『小樽運河と石造倉庫』(※3)に報告され、これによると手宮から勝納地区までで450棟の石造建築の遺存が確認されている。

 これらの調査からすでに10数年経た昨平成4年度に、忍路、塩谷、祝津、高島など後年の合併地区を含めた小樽全市域において、現存する組積造および土蔵造りの実態調査を行なった。表3-2-2はその結果を構造別に分類し町別にまとめたものである。384棟の石造建築(うち345棟が木骨石造)および34棟の煉瓦造建築、17棟の土蔵造りを確認できた。本石造と木骨石造は外観隅石の厚さから容易にその構造を判別できるが、煉瓦造と木骨煉瓦造は外観から判断が難しいため煉瓦造の項にまとめておいた。

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※1~北海道立文書館所蔵

※2~ここでは石造と木骨石造、煉瓦造と木骨煉瓦造を区別していない

※3~日本ナショナルトラスト編、昭和54年9月発行