雪国の四季 (その3)

2015年04月09日

  三月三日はおひな様で、女の子は得意になって、雛壇の前の赤井毛氈の上で、白酒をいただいた。

 四月八日はお釈迦様の誕生日で花祭り。・・・。

 四月半ばから雪がとけ、この頃のぬかるみ道は最悪である。

 五月にになると、春がくる。梅も桜も桃も水仙もたんぽぽも一度に咲く。家の裏のがけに緑色の実のなる愚図ベリーの白い花が沢山咲いた。・・・。この月の十五日には招魂祭の祭りが花見の中で行われる。

 五月は男の子の節句。よもぎを菖蒲の葉に添えて軒先につるし、菖蒲湯に入り、菖蒲笛を吹く。鯉幟を立て、武者人形を飾って、べこ餅を頂く。・・・。

 七月十五、六日は鎮守様の住吉神社のお祭り。父の店も工場も、小樽中がやすみで、皆参拝に出かけた。十四日が宵祭り。厳寒に紫の下がり藤の紋のついた幔幕をはりめぐらし、紋の中に「祭」という字の入った御神灯をもって、街にをそぞろ歩き、神社の稚子に出て、御神楽を舞う。翌十五日は、朝からお神輿に従って、街をねり歩き、夜は御神楽。非常に疲れるが、とても楽しい。七時すぎると祭りの催物を見に出かける。決して許されはしなかったが、どんなに御伴なしに、自由勝手に歩きたいと思ったことか。いまも、あのころの切ない想いを思い出す。猿芝居、轆轤首、蛇娘、娘かっぽれ、どじょうすくい。みんな楽しい祭のそえ物であった。十六日は、港で船神輿の渡御があって、祭は終り。祭の後の淋しさは格別。

 八月はお盆。一年中で食物が一番おいしい時。かぼちゃ、西瓜、トマト、桃、梨、りんご、あんず、巴旦杏、ラムネ、綿菓子、盆菓子、おだんご、赤飯。「生仏達が待っているから」といって、祖母はたくさんの供物のお下がりのお菓子や果物を思い切りよく孫達にふるまった。生仏達は、お供物を頂いて、おなかの底から亡き祖先に感謝するのである。春の彼岸の頃は雪が深くて参詣できないので、お盆には必ずお墓詣りと、お寺詣りにに出かけた。祖母と両親と子供達と女中と十人近い人が墓石に水をかけ、亡き人の好物と線香を供えて冥福を祈った。

夏休みになると、登別温泉へ出かける。・・・。

CIMG9539より