越中屋ホテル(現「罐友会館」色内1の8の25)

2023年03月27日

 色彩豊かなステンドグラスが、渋い英国調意匠とあいまって、タメ息を誘うほど魅力的だ。いま“ガラスの街”とPRされる小樽だが、歴史の格の違いを見せつけられるよう。

 大理石の正面玄関に入ると、薄暗い中からステンドグラスが浮かび上がる。そこには「DININNG ROOM」の文字も。現在は事務所となっているのだが、「よくぞ残しておいてくれた」と利用者のセンスに脱帽する。

 驚かされたのは、それ以外にも、部屋のガラス戸の上、各階のトイレの仕切にまで、さまざまな模様のステンドグラスがふんだんに使われていることだ。客室だった各部屋には今も古色蒼然(そうぜん)としたルームナンバーのプレートが付けられ、古き良き時代の雰囲気が漂っている。

 昭和六年、地元の建築家倉沢国治の設計で、本道初のホテルとして建てられた。当時の“商都”の繁栄を象徴する。

 小樽在住の画家千葉七郎さんは、その写真集「小樽の建物」の中で、「昭和初期の美しいモダンガールの雰囲気を感じる。この時代の小樽の建物の傑作」と絶賛。ホテル開業の華やかな客として宿泊した長谷川一夫ら映画スターの出入りを見に行った、と回想している。

 鉄筋コンクリート造り三階建て、延べ千六百九十八平方㍍。二列の縦長の出窓などのガラスと、褐色タイルのコントラストが映える。道路を隔てた真正面の三井銀行の白く荘重な姿とは対照的だ。

 その歴史は変化に富んでいる。港に近い外人専用だった高級ホテルも、昭和十七年からは旧日本軍が使い、敗戦後は一時進駐軍に接収されて将校クラブとなった。現在は北海製缶の所有。一、二階が会社、ライオンズクラブなどの事務所、三階が同製缶の寮になっている。

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~おたる遺構再見1 読売新聞社編 昭和60年5月1日より

《指定第16号》

~2016.3.30