実態調査(1992年)から その18~石造建築の構造①

2019年01月17日

3-2:小樽の木骨石造建築

1.石造建築の構造

 小樽では石造建築の大半が木骨石造であることは 既に述べたが木骨石造は規模の大小に関係なく基本構造はおおよそ同じである。4~5寸角程度の柱を3尺おきに立て、厚さ5寸(約15㎝)程度の軟石を手違いのかすがいで木骨の軸組みに留める。柱の頭を桁でつなぎ、臥梁(がりょう)(※4)がわりの鉢巻き石(※5)をかすがいで桁に緊結し、その上に小屋組を架ける。図3-2-1は木骨石造3階建てのの旧塚本商店石蔵(色内1丁目、平成3年取壊し)の実測断面図である。木造の軸組に軟石を積んだ構造が見て取れるであろう。

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 一方の本石造は、厚さ1尺(約30㎝)程度の角石を積み重ね、小屋組みの陸梁(ろくばり)や2階床梁は、石に欠き込んで入れ、ボルト留めする。開口部は木骨石造と違い、楣(まぐさ)やアーチによる支持にしなくてはいけない。本石造では、楣部分だけ特に硬石(安山岩)を用いるものもある。図3-2-2は本石造2階建ての(株)同立薬品石蔵(長橋4丁目、旧鈴木三重宅石蔵)の設計図である。「鈴木氏石造倉庫之圖」と題されたこの図には、1/50の階下平面(1階)、階上平面(2階)、姿図(正面図)、姿側図(側面図)と、1/20の詳細図(矩計図)が1枚に納められており、本石造倉庫の基本構造がよくわかる。

 本石造で最古の遺構は明治26年の第百十三銀行小樽支店(現北海道林屋製茶(株))で、明治期には他に旧日本郵船小樽支店(明治37年)と旧北海道銀行本店(現北海道中央バス(株)本社、明治45年)しか見られない。小規模な倉庫に限って見ると、明治期の本石造は確認できないが、大正以降、昭和にかけて本製造の石造建築全体に対する割合は増加している。  

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※4~組積造の壁体の頂部をかためる水平材

※5~軒蛇腹部分の石のことをさす