千代田生命ビル

2015年06月19日

CIMG0704当時は唯一の鉄筋の建物だった千代田ビル

~当時は見物人も 市内高層建築の先駆~

 建て物はそれほど古くはないが、鉄筋コンクリートのものとしては市内でも由緒あるもの。昭和五年六月地鎮祭、同慈雨一月上棟(とう)式、翌六年十月十日に完成した。

 当時の小樽は道内、樺太の金融機関の中心地、銀行、生命保険会社が軒を並べていたが、高いところで二、三階で、消防の望楼が一番の高層建築だった。その隣に、当時としてはモダンな鉄筋の高層ビルが建ち、威容を誇った。

 七百三平方㍍の敷地に、延べ、二〇二六平方㍍という白いビルは、当時の人には驚異に違いない。地上五階と高いだけでなく、小樽でも、初めて地下一階のビルができた当時、物珍しさもあって、見物人が遠くからもきたという。

 外観は白っぽい石を使い、右手の入口に数段の階段がある。古い木造建築や、石造りの倉庫のマチの中で、ひときわ目立った存在だったことはたしかで、千代田生命に三十三年間も勤めている富岡町の北見乙一さん(七二)は「建て物内外とも戦前と少しも変わっていません。当時の小樽では、確かに珍しいものでした。あまりに大きいので一部を貸していた。」という。

 設計、施工とも本州の大蔵土木などがきて行なったもので、着工から完成まで一年間の短期間だったが、いまだに建て物に狂いがないという立派な工事ぶりだった。

 戦後、樺太がなくなり、金融機関も続々と札幌に移転したのに合わせ、千代田生命も札幌に北海道支社ができおたるは営業所に格下げとなり、今は小じんまりしている。周囲には、消防本部をはじめ、市役所、市民会館が建ち、市内にはデパート、ホテル、合同庁舎など高層ビルも続々できて、海からは目立たないが、いまだに戦前の金融界のおもかげをこのビルに見ることができる。

~小樽の建築 北海タイムス

昭和43年7月24日~8月11日連載より

IMG_0314千代田生命の文字がうっうらと