貯金局出身の美術家(その2)

2017年05月30日

 先月号では、小樽貯金局出身の美術家で、昨年、今年と続いて亡くなられた須田三代治さんと小竹義夫さんを回想した。

 本号では、同じく貯金局出身で、現在も積極的に創作活動を続け、抽象版画で高い評価を受けている一原有徳さんについて述べてみたい。

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 一原有徳さんは、昭和2年貯金局に就職、昭和45年に定年退職するまで勤務を続けた。明治43年徳島県に生れ、3歳のとき両親に伴い来道。真狩村に住んだが、大正12年に小樽に移住し現在に至っている。

 貯金局では須田三代治さんから油絵を学び、昭和26年の第5階市展では油彩を出品し入選。翌年の同展で北海道新聞社賞。更に、第7回市展で文団協賞を受賞している。昭和29年から石版モノタイプを始めたが、この年に全道展に入選し、会友となると共に小樽市展委員に推挙されている。

 昭和36年には、全道展会員となったが、作品は国画会展や日本版画協会展にも出品している。

 昭和35年「朝日選抜秀作展」、同年神奈川県立近代美術館の「現代日本の版画展」。昭和37年「東京国立近代美術館の「現代日本の版画展」、同年及び翌年「東京国際版画ビエンナーレ展」、昭和38年神奈川県立近代美術館の「世界の版画展」。

 昭和48年から北海道立美術館の「北海道秀作美術展」に推されて出品し、昭和50年には同展で優秀賞を受賞している。(道立美術館は昭和52年から近代美術館となる)。昭和53年から道立近代美術館は「北海道現代美術展」としたが、一原さんは、この第2回展で優秀賞、第4回展では最高賞の道立近代美術館賞の栄誉に輝いた。

 昭和63年には、神奈川県立美術館で「一原有徳の世界展」を開催し、平成2年には同県下6個所でこの巡回展、その前年には生まれ故郷の徳島県立近代美術館の収集作品展にも出品、作品が収蔵されている。

 紙面の関係で出品展の一端しか紹介することができないのが残念であるが、一原さんはいまも意欲的に創作を続けており、全国から特別展への出品以来が続いている。

 一原さんの作品は、ニューヨーク近代美術館、韓国国立近代美術館、東京国立近代美術館、国立国際美術館、神奈川県をはじめ全国の県立美術館、小樽や広島などの市立美術館など28館の公的美術館に収蔵されている。全国的にも著名な版画の第一人者である。

 この功績に、昭和56年に小樽市教育文化功労賞、平成元年紫綬褒章、平成2年には北海道文化賞が授与されている。

 全国的に著名な美術家や美術評論家、学芸員から一原さんの作品に高い評価が寄せられているが、ここでその一つを紹介したい。

 平成5年に北海道新聞社が刊行した『北海道の美術100年』には、2頁にわたって一原さんの作品を掲載し、「旺盛な実験精神に満ちた作品」と、高い作品評で結んでいる。

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 創作集「小さな頂」を昭和49年に刊行、昭和52年にはオリジナル版画集「霧のネガ」を発行し注目を浴びた。現在まで画集3冊。版画のほかに句集4冊、エッセー2冊が出版されている。

 一原さんとは40年近くご交誼をいただいている。一原さんのイメージの発源に関心をもって潮見台のお宅へ何度も伺っているが、そのたびに教えられるものが多い。

 進取の意欲と感性の共鳴が、今なお次元のある一原作品を生み出している。

IMG_0735本年7月、ゆかりの真狩村開基100年 記念モニュメントとして建立された一原さんの作品「翔」(高さ18㍍)

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IMG_0740貯金局在職中のモノタイプ版画(1960年)で美術界から注目された作品群の一点

~小樽市史軟解 第3巻

岩坂 桂二

ラブおたる より