小樽にある小坂秀雄設計の建物

2016年12月25日

 10・11月号では貯金局出身の美術家として須田三代治、小竹義夫、一原有徳さんを紹介したが、ほかにも水彩の山本茂さん(故人)や、現在では中村訓敬さん、徳吉和男さんが油彩画で励んでいる。

 小樽の貯金局は、大正5年小樽為替貯金局として設置されたことは先に述べたが、道内他都市と競い地元誘致運動を商業会議所(今の商工会議所)を中心に展開して決定されたものである。当初は、現在の市水道局の位置にあった商業会議所を一時借り受けてスタートした。

 大正7年落成した庁舎は、洋式木造2階建で、現在のエキサイ会病院あたりにあった。この庁舎の小路は大虎組加藤忠三郎が請負っただけに立派なものであった。

 そして現在、文学館、美術館として使われている建物が、小樽地方貯金局として大規模な庁舎を落成したのは昭和27年である。

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 この庁舎を設計したのは、賢特会で注目を浴びた小坂秀雄さんである。昭和22年に土地購入の折衝を始め、昭和25年に基礎工事を開始したが、朝鮮動乱による資材入手不足と地下水の防水作業などで大変だったと思われる。工事は大成建設であった。

 この小樽庁舎は、郵政省全局舎改築にさきがけてのモデルケースと したものだけに、安全度、利便、厚生施設の完備、壁の配色など内・外装共に美観に配慮されたのべ面積4650平方㍍ガラス張りのモダンな建物である。

 設計者の小坂秀雄さんは、小樽庁舎を設計湯治逓信省経理局営繕課長であった。

 明治45年(大正元年に続く)生まれ、大正10年東京大学卒業、松田建築事務所を経て逓信省。昭和38年に丸ノ内建築事務所を創設した。所属団体は日本建築協会、日本建築設計監理協会連合会、東京建築士会である。昭和26年に小坂さんは日本建築学会賞を受賞している。

 小樽庁舎を設計した後に小坂さんは、京都地方貯金局を設計しているが、美術雑誌「みづゑ」にその建築が特集されて高い評価を受けた人である。

 このほか、外務省庁舎や愛知県文化会館、KDD国際通信センターなど多くの施設を設計している。

 以上は昭和41年発行の「小樽地方貯金局五十年史」を参照にし、貯金局出身の一原有徳さんからお話を伺ったものである。

 日本建築学会終身正会員、一級建築士の中村大平さんも小樽の庁舎について「この建物は道内一のRC建物(鉄筋コンクリート架構形式の一つ)として建てられたものー」と記している。小樽庁舎建設当時二中村大平さんは、大成建設札幌支店作業所長として工事に携わった人である。

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 いま、建築界の原広司さんをはじめ建築専門家や美術家は、北海道の、しかも小樽にある唯一の小坂さん設計の建築物保存に強い関心を寄せている。

 かつて本市の市民大学講座の講師として来樽した法政大学教授松下圭一氏と、私は深夜まで談笑したことがある。いま同教授の著書の一部が浮かんでくる。

 『現在「地域個性文化」が重要視されているが、そのために地域の生態にみあったデザイン政策の形成が必要とされている……』。昭和27年に建てられたこの貯金局庁舎は、その意味でも時代の先駆性がみられるものではなかろうか。

 更に『「量充実」から「質整備」への飛躍につながっていく…』。

 『わが国の「手続き」「執行」をめぐる手法習熟の欠如から……』という言葉を思うとき、そのために惜しくも消えてしまったものが多くあることを反省したい。

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~小樽市史軟解 第3巻

岩坂 桂二

ラブおたる より

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