海猫屋

2020年05月27日

CIMG5389明治39年に建てられたというこの倉庫。雪にも強くがんじょうそのものだ。

~かつては倉庫いまはスナック

 選挙期間中休載していた小樽の町並みをまた続けます。復活第一号は、シャチホコが屋根にのってる、小樽倉庫裏手の「海猫屋」。三階建てレンガ倉庫の内部を改装、一階は昼間喫茶、夜はスナック。二、三階は舞踏集団「北方舞踏派」「鈴蘭党」のけいこ場と宿舎。「うみねこ屋」と 呼ばせるが、知らない人は「かいびょうや」。それが「怪猫屋」となり、変じて「ばけねこや」なんていう人もいるが、それはさておき、もとは磯野進氏(昭和十三年没)の由緒ある倉庫。

 建てられたのは明治三十九年で、建築請負人は「大中」中村組。地震に備えて壁は二重のレンガづくりになっており、カワラ屋根は防火の役目を果たした。本州のカワラ屋根と違って一枚ずつ鉄線でくくりつけられており、雪にも強い。壁にソロで書かれている¬七(かねしち)は磯野商店閉店後の所有者の屋号だ。

磯野進氏は大正期に商業会議所の会頭を務めた小樽有数の海陸物産商で、出身は佐渡の両津。佐渡でみそを醸造し道内販売の拠点とすべく、明治三十年、小樽港町に進出して一代で産を成した。多喜二の小説「不在地主」のモデルといわれている。

 当時、倉庫の一階は佐渡から送られてきたみそダルが占め、二階にはわらじやむしろ類、三階は家財道具が入っていた。この中で近くの子どもたちはよくかくれんぼをして遊んでいたという話だ。

 昔はみそのにおいがただよっていた倉庫の中は、今はコーヒーの香りに変わり、時代の流れを強く感じさせる。「保存的再利用」の成功例と言える。

小樽の町並み 朝日新聞社編

昭和54年4月25日より

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~2016.3.30