ある老親方~その六

2017年09月02日

 本間さんは最後にこういっていた。

 「私は自分の思っていること、またしてみたいと思っていたことは、一応全部やってきた。これからの余生は生きている限り元気でいたい。今までの人生で一番想い出になるのは矢張り昭和三十六年四月二十日の夕刻のあの時のことだろう。また自分の鰊に対する一生の記念として、何十年もの間経営してきた鰊定置網の元標(北海道庁で定めた建網の方位を示した石柱)のところに記念碑を建てたいことです。息子達もなんとか自分の健在のうちに建ててくれるといっているが、いろいろな点からまだ決めかねている」

 と話されていた。

 本間さんは今屈託なく元気で、天気がよければ自宅から少々離れたブドウ園で仕事を楽しんでいる。いつまでも丈夫で元気で長生きを望んで止まない。

 本間さんは現在小樽市蘭島町に住み、小樽市老連副会長、蘭島老人クラブ長寿会々長をしている。

~鰊場物語 内田五郎より