第十一話 オタモイ回顧

2017年09月06日

IMG_3180より

 オタモイの海は透明でつめたい、岩場の浜は泳ぎやすく楽しい慈愛にみちた母の海です。景色も輝いて素敵なのです。山から見おろすと海の底まで絵の様に明るく竜宮の眺めです。遠い積丹やにぎやかな蘭島や余市の砂浜とも遠い別世界なのです。

 父は私が生まれる秋深まりゆく寒い日に、オタモイの地蔵様に何度か願をかけにお参りに訪れたことを、母から聞かされました。海岸ぶちの地蔵尊の祠(ほこら)には沢山のローソクがたちならび、お線香の煙がもうもうとたちこめお供えがならび、信心深い方達が引きもきらずうちわ太鼓をたたき、お経を上げてゐました。

 或る夏の一日、海好きの友達と連立ちオタモイにでかけ、其の時急な断崖を危険ですからとの制止もきかないで、自転車で降下中にブレーキの故障で、大きな岩に激突し車体も二つに折れるという事故にあいました。全身打撲とすり傷という大怪我にもなり気を失いましたが、骨折と大きな出血もなく全く運よく日魯漁業のトラックに助けられ、荷台にのせられて帰宅したことがありました。この様な無茶な冒険でも地蔵さんののご利益おのお蔭で命を救われたのではないかと、ゴロン坊の私も感謝したものであります。子供は時には大人の予想を超えた危険にも挑戦します。

 又有名なオタモイには遊園地と竜宮閣が、昭和十年に花々しくオープンしました。小樽の自慢の岩上の大料亭でございましたが、戦後火災にあい二度と見られなくなりました。悲しい出来事でしたが、小樽の観光の大きな損失になったと思います。

IMG_3184オタモイ龍宮閣(火災で焼失)