実態調査(1992年)から その26~漁場の石造倉庫

2023年11月01日

 2.街並みと石造建築

 ④漁場の石造倉庫

 これまでの調査では、あまり顧みられることのなかった漁場の石造倉庫について少々触れておきたい。

 塩谷および忍路の石造は、おしなべて木骨石造2階建てで、ほとんどが住宅付属の小規模なものである。軒高が低く、垂木小屋組を架け、塗ごめの片引き窓をつけ、入り口部分に下屋を架けた形態をしている。

 また、青山家5棟、茨木家3棟、白鳥家3棟の石造倉庫が現存し、番屋建築と共形成される海岸線の町並みは、鰊漁華やかなりしころを彷彿とさせてくれる。特に祝津3丁目に遺存する青山家の石造倉庫2棟は、梁間5間×桁行10間と梁間5間×20間の巨大な建物である。前者は今回の調査で唯一確認できた重ね梁の和小屋を架け、後者ではクイーンポスト・トラストを架けるものの、技術的にまだ未成熟のようで、対束の中央に丸太を立てている。一方文庫蔵では、石仕上げに細かな造作がみられる。小樽ではほかに例を見ない、江戸切り(※13)の目地仕上げやビシャン(※14)や小叩き(※15)の表面仕上げなど手のかかる石細工をしている。

※13~石材の周辺目地部分を1㎝程度溝形に凹ませたもの

※14~石材表面の叩き仕上げの一つで、ビシャンと呼ばれるハンマーを用いることからこう呼ばれている

※15~石材表面仕上げの一つで、ビシャンよりさらに上等な仕上げ

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