どうしても食べてみたいもの

2020年10月24日

市立小樽図書館から借りて来た本に…。

載っていました。

『もう二度と食べる事のないであろう と思っていた ところが…。』

(私の田舎 青森県おいらせ町では、とごろ と呼んでいました)

北海道山菜誌

1980年5月25日 第1刷発行

著者  山本 正

    高畑 滋

    森田弘彦

発行者 安井 勉

発行所 北海道大学図書刊行会

 

『小さい頃、よく食べたんです。木の根だと思っていましたが、山芋の仲間のようです。苦くもあり甘くもあり。大人になっても帰省して見つけた時、買って食べていたんですが…。一昨年、帰った時、「売っていないかなあ~。」と親せきに聞いたところ、「ところを栽培する人がやめてしまったよ。」という返事…。』

その ところ が、下の絵です。

次代をむすぶ山菜トコロ 時代と時代をつなぐものとして、ナガイモと同じ仲間のヤマノイモ科のトコロを用いた。理由は、この山菜が遥かなる縄文・弥生時代はもちろんのこと記紀・万葉の時代はもとより平安の時代以降までも広く日常の生活の中で利用されていた。そして江戸時代のはじめには作物として栽培された。しかし、農業技術の発達を背景に江戸時代後期には主として救荒用山菜となり、そして現代では食べられることさえ完全に忘れ去られているなど、時代の移り変わりをハッキリとみせてくれる山菜だからである。トコロといっても、知らない方も多いと思われるので、牧野富太郎博士の『新日本植物図鑑』(昭和三十七年)から、その性状をみてみると、

 「山野に多くはえるつる性の多年生草木。地下部は冬に枯れる。茎は肥厚して横に長くのび、まっすぐになるものや、途中曲って来るものもあり、ひげ根を出す。これは真の根茎でヤマイモのいもとは形態学的に全くちがう。葉は長い柄で互生し、心臓形で先端が尖り、質薄く無毛である。雌雄異株で夏になると葉腋から長い花序を出し、淡緑色の花を並べ咲かせる。雄花序は花軸から更に二~五花をつけた小花序に分かれるが、雌花序はたれ下って一花ずつならんだ無柄の雌花をつけたものである。花被は六片あり、雄花は雄しべ六、雌花には三柱頭を持ち、さく果は三枚のはねあがり、たれ下った穂に上向についており、種子の一方には膜質の翼がある。長寿を祝うため正月の飾りに使い、そのひげ根にたとえ、ちょうどエビを海老と書くように、山にはえるというので野老と書く。根茎を食用とすることもあるが、味は苦い。(漢名)普通山萆薢が使われているが誤り」…。(p56・57)

 

(2)現 代

オニドコロに挑戦

 味が苦くて、いまはほとんど食べる人がいないので、その食べ方もすっかり忘れられているこのオニドコロ(トコロの別名)に敢然と挑戦し、苦心惨たんして食べた人がいる。山菜料理家で『野生の食卓』(昭和五十三年)を書いた甘糟幸子さんである。その話を紹介しよう。

 「オニドコロの食べ方はいくつかの本に出ていますが、私はまず権威ある本山荻舟の‶食事辞典〟(平凡社)にそってやってみました。荻舟先生はこう書いています。『秋にその根を掘り、細かく切ってゆでたものを、たびたび水替して一夜そのままに放置すると苦みがぬけるから、米麦などにまぜて飯に炊き込む』。

 私はこの通りしましたが、苦くて味見したあとは胃痛がおきるのではないかと心配したほどでした。

 二度目には自分で工夫して、ひげ根のついた皮を前回より厚くむき、茹る時間もたっぷりとって、水道の水を出したままで一昼夜さらしてから蒸してみましたが、やはり苦くて食べられたものでありません。そして料理研究家と言われる先生の本に『親指ぐらいのオニドコロをゆでて軽く塩をふって食べると、オツナ味がするものです』と書いてあるのを思い出して『嘘つき!』と思わず一人で叫んでしまいました。

 ともかく、食べた人があるのだから、ここで放り出してはなりません。私は気をとり直して、さらに資料を見たり、工夫を加えたりしました。最終的にやってみたことは(一)、繊維を縦に薄切りすること、(二)、強い灰汁でゆでること、(三)、水道の水を細かく流しながら三昼夜さらすこと、(四)、さらに蒸し器で二十分程蒸す。その後は百合根を煮たときのことを思い出して、お酒をたっぷり使って、多めの砂糖にだし汁、醤油を合わせて弱火でゆっくり煮てみたのです。

 今度はどうやら食べられそうです。毒見役は主人ですが、『うまい味だよ』と小皿のオニドコロを平らげてしまいました。翌日になっても、おなかの調子が悪いと言いませんので次には遊びに来た友人に食べさせました。

 …。(p58・59)

 

ところ(野老)

 ヤマノイモ科の蔓性多年草。夏葉腋に淡緑色の小花を穂状につける。雌雄異株。花後3翅ある蒴果をつける。葉は互生、蔓は右巻きで、果実が上向きにつく。根茎は苦みを抜けば食用となる。通常トコロとよぶのはオニドコロで、ほかにヒメドコロなど数種ある。〈本草和名〉

~広辞苑より~

でも

調べてみたのですが

残念ながら載っていませんでした

 

私が食べた ところ の味は、まさに『親指ぐらいのオニドコロをゆでて軽く塩をふって食べると、オツナ味がするものです。』でした。ホクホクした食感と苦みがあって素朴な甘さもが感じられ、見つけるたびに食べていたのですが…。ず~と生姜やウコンの仲間だと思っていました。

 

このブログをご覧になっている方で、どなたか トコロ を栽培している方または販売している方をご存知ないでしょうか?ご一報いただければ幸いです。

~2018.12.8より