小樽染紋塾

2014年08月15日

日本の伝統工芸の技術を守るため発足

紋の数はどれくらい?

家紋は約六千種以上あります。日本で紋章らしいものが現れたのは平安時代の中期頃からです。

 そして江戸時代にはすでに四百種位完成されていました。

 ヨーロッパの紋章は、貴族だけが付ける厳めしい形であり、日本の紋章は桐、藤、柏などの植物や蝶、鶴などの動物を抽象化した形が、簡略され優美で、なによりも庶民が広く用いてきたところが大きく違います。そして自由につくられてきたので、現在ではその数は、二万から三万位あると云われています。

よく逆さにつけられる紋

 町かどの飲食店の「のれん」などにデザインとしてよく紋がついていることがありますが、逆さについていることがあります。「丸に剣片喰」はほかの紋と違い、剣が上に位置するので間違いが多いのです。

 以前葬儀の手伝いをしていて、玄関の大きな看板に、この家紋が逆さについていました。葬儀屋さんに注意すると、早速会場の全部の紋が替えられ間に合いましたと、お礼を言われました。上絵師(紋書業)としてどうしても気になりました。{家紋は家を大切にする心です。}

 片喰(かたばみ)はカタバミ科の多年草。繁殖力旺盛な植物で、種族繁栄につながり、家紋に多く用いられてきました。

・・・・

不思議な家紋

紋を書いていて、どうしてこんなもんが作られたんだろうか・・・、とよく思うことがあります。

 一番多いのが植物紋、その他、天地紋、動物紋、器具紋、模様紋、文字紋、図符紋、と分類されますが、たとえば動物でも蝶とか、鶴とかなど優美でわかるのですが、こうもり、百足(むかで)などが紋帳にあり表情が実に良いのです。また尾形光琳がデザインした十数種の紋もあり、どれも簡略した美しい紋になっています。解らないのは、ローソクの紋とか、炉縁の紋など使用者不明の紋とされています。また豆蔵、鼻紙など三十種もあり、使い捨てといおうか驚くほかありません。紋帳は本当に見飽きません。

・・・・

暮しのなかの家紋

日本人にとって着物は一番体にあっています。最近「和風復活」といわれており、着る機会が減ったとはいえ日本人の誇りの着物をもっと着て頂きたいとおもいます。タンスに寝かせたままでは、もったいないことです。もしも、シミやカビなどついていたら私たち専門家「染紋塾」へ持参してください。古い着物でも洗い張り、染めぬき、染め替え、張り紋などで再生できます。家紋は一家に二つ(両家)の紋があります。そして娘さんが嫁ぐとき父方の紋を着物につけていくのが正式です。実家の恩を忘れないようにという、昔からの心遣いがあるようです。

 

印刷紋と手書き紋

 今は機械化が進み、わが業界でもここ十数年で印刷紋が増えました一見きれいに見えるのですが私共は「死んだ紋」と言っています。手書き紋は絹に何百年の伝統ある染料で、心を込めて書いております。インクによる印刷では絹の紋付にはなじまないのです。また機械は簡単で誰でもでき、知識も技術も要らなく、安く量産できるのです。私ども手書き紋業者はそのため廃業においやられている現状です。その結果優秀な職人の技術がなくなりつつあります。この日本の伝統工芸の文化遺産を守らなければ、の危機感を持って「染紋塾」を発足いたしました。どうぞご理解を賜りまして、「紋のはなし」を終わります。

小樽染紋塾会員名簿

伊藤一郎  旗イトー

飯野正一  和裁士

大島吉史  大島紋章店

太田利盛  結城屋和服洗染工場

菊池 昭  菊池志みぬき店

関 知井  関和裁研究所

千葉 豪  千葉紋忠店

寺岡和子  アトリエKAZU

飛田芳政  飛田洗染店

平成七年九月一日 現在

 

小樽染紋塾設立の趣旨

 私たち小樽の職人は、ますます失われていく、日本古来の伝統ある職業を今日まで守ってきました。しかし長引く不況と、それぞれ後継者もなく、みな高齢者になり、このままでは有能な職人たちが、残念ながら消えつつあるのが現状です。

 これらの実情を深く憂慮し、危機感を持って対処するために、このたび和服関連の異業種が、全国にさきがけて結束いたしました。

 私たちは、英知と経験にもとづく技能を結集して、和服復活を底上げし、歴史ある小樽の文化遺産を活用しながら、新しい創造を模索していきたいと存じます。

 また継承者育成や、これら伝統の技術の保持に努力しながら、よりよい手仕事を通じて、小樽の心の豊かになる町の発展に、寄与したいと存じます。

小樽染紋塾 塾長 千葉 豪

~語り継がれる町 おたる 第5号 平成8年4月  小樽道新販売所会より~

 CIMG5154

 

CIMG5156

 

 

CIMG5157