なぜ幻の魚に (九)

2014年11月20日

  北海道の海から鰊の姿が消えてから久しいものがある。

 この鰊が海から完全に姿を消してしまったのかというとそうではない。現在でも北海道より北の海域では毎年かなりの量が漁獲されている。鰊ばかりでなく鮭、鱒そのほかの魚類が相当取れている。

 オホーツク海沖合から樺太西岸沖、沿海州沖合から遠くカムチャッカからベーリング海にいたるまで鰊が回遊し漁獲されている。そこには自然があるからである。

 北海道の鰊が獲れなくなった原因、理由に人為的影響(乱獲、水質汚濁などの)か自然的影響(慢性的な海洋条件の悪化による)かの二通りの解釈をあげているが、これらも確たる根拠がないようだ。

 日本はかつての第二次世界大戦で、大半のものが破壊された状態になったが、とりわけ森林の伐採による山林の荒廃はひどかった。戦後いちはやく復興対策として植林や治山治水に力をそそいできたが、植林の場合など短期間で間に合うものではない。植林して何十年の年数を要してやっと元の状態になるといった具合である。その間に気の無くなった山々は雨には弱くなり、大雨が降るたびごとに河川が洪水となり、流域の泥土が海に流れ込むといった繰り返しだった。

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 河川の水と鰊の繁殖とは切り離すことの出来ない関係にあるようだ。かつて山々に欝蒼と森林があり、そこから清流が海へそそがれる。その清流に鰊の稚魚の成長に欠くことのできないプランクトンの発生があるからだ。

 さきにも書いたが、北海道石狩湾の厚田の周辺で、毎年春先になると大なり小なり鰊が獲れている。専門家の人達はこの鰊を石狩湾に棲息している特定の鰊と称しているが、しからばなぜ石狩湾内の厚田周辺のみに鰊がいるのだろうかと、疑問を感じる。北海道の海岸線は広い。たとえ僅かな鰊でも他の地域でも獲れるべきではなかろうかと。

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DVC00001.JPG喜びと嘆きの八十年~近年、増毛、浜益、厚田、銭函(小樽市)の沿岸で時々鰊漁獲がみられる。これは回遊性の鰊ではなく、石狩湾特有の鰊であるといわれている。

 明治、大正から昭和の初めにかけて、春鰊が沿岸に郡来(ぐんらい)し 、群来(くき)汁でうみが真っ白になり、子供でも産卵鰊を手づかみに出来たというのも昔の語り草になった。

 鰊場で生まれ育った私にも転機が与えられ、父祖四代続いた鰊漁業も私の代で締めくくることになった。