鰊場のうた(4)~キリ声

2015年01月14日

CIMG7857

 さて呼吸と力を合わせ、網起こしのうたに乗って、乗網した鰊は胴網の三分の二くらいまで攻め進んできた。さすがに気負った若い衆にも疲れが見えはじめ、網の中のニシンもバチャァ、バチャァとに建つようにあばれる。早く枠網に落としてしまわなければならない。若い衆達の一層の奮張りがせまられる。そのころ合いをみて船頭は“キリ声”をかけるのである。

どっとーおこー

どっとこせーいのこら  エー

よいやーさー      アラ

            ヨーイヤサー

やさの

よーいさーあ      エーエエ

            ヨイヤアサー

よーいとおーなあ    ホーラアエンヤ

            アラアラ

            ドオーコイ

            ヨーイトーコ

            ヨーイトコナー

ほーらあーえーえ

このあみおこせば

やーあえーい      ヤートコセー

            ヨーイヤサホーラア

せんりょうまんりょうの

かねじゃもの

よーいとーなあ     ホーラーエンヤ

            アラアラー

            ドオーコイ

            ヨーイトーコ

            ヨーイトーコナー

(以下繰り返す)

起こし船の若い衆は船頭の音頭により力を合わせシタゴエをとりながら、小刻みに胴網を攻めたてて行く。“キリ声”の音頭は若い衆の士気を高め、一定の休みを与え、疲れを少なくさせる。しかも勇壮で哀調をおびた節回しのもので、熟練した船頭級でなければ本当の味は出せなかった。

 私も過去何回となく若い衆と共に“キリ声”をうたった一人だが、この時の気分は何ともいえない。“祈りの声”であり、勝利の“うた声”でもあった。頭の中には雑念などいっさい起こらないのであった。